東海ろうきん 「Radar」 2021年冬号

東海労働金庫(東海ろうきん)さんが年4回配布しているコミュニケーションマガジン「Radar」。その中で、税金についてのコラムを毎回執筆しております。

 

2021年冬号のテーマは「生前贈与は使えなくなるのか」です。

 

令和2年12月に公表された相続税・贈与税制度の改正案が週刊誌等で報じられ、話題になっています。

 

この改正案の内容は抽象的であり複数の予想が考えられることと、現時点では案に過ぎないことから、心配するのは早いのでは、というメッセージを込めて執筆しました。

 

是非、ご一読ください!! 

 

https://tokai.rokin.or.jp/radar/radar.html

 

https://tokai.rokin.or.jp/radar/webbooks/winter_2021/HTML5/pc.html#/page/6

 

 

【付記】

 

コラムの中で「改正案の立案者はドイツ等の採用している相続税・贈与税制度のことを最も評価している」と予想をした理由を説明します。

 

内閣府のサイト内で次の資料を見つけました。資料の内容が上述の改正案の内容と合致していることから、自民党等の担当者が当時意識していたのは、アメリカ・トイツ・フランスの3ヶ国の相続税・贈与税制度である可能性が高いと考えました。

 

税調第18回総会 資料2-2 「3. 我が国と諸外国の相続・贈与に関する税制の比較」

https://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/zeicho/2018/__icsFiles/afieldfile/2018/10/16/30zen18kai2-2.pdf

 

上述の改正案には2つの目的が記されています。一つは、高齢世代の所有する財産がより早いタイミングで若年世代に移転することを促す税制に切り替えることにより、経済を活性化させることです。もう一つは、富裕層が毎年贈与を続けることによる相続税の節税を抑制することです。

 

上述の内閣府の資料によると、アメリカの税制は日本の相続時精算課税制度と似ており、二つ目の目的に対する効果は大いに見込める一方、より早いタイミングで若年世代に財産を移転することに対するインセンティブがないため、一つ目の目的に対する効果を上げることが期待できません。

 

一方、ドイツ・フランスの税制は、基礎控除が相続税と贈与税で共通になっており相続の時だけでなく贈与の時にも使えるとともに、基礎控除は一定期間が経つ毎にリセットされて何度でも使えることから、より早いタイミングで若年世代に財産を移転することに対する大きなインセンティブがあり、一つ目の目的に対する効果を上げることが大いに期待できます。このことから、「改正案の立案者はドイツ等の採用している相続税・贈与税制度のことを最も評価している」と予想をしました。

 

なお、時間の関係でフランスの相続税法の条文は読んでいません。上述の内閣府の資料の内容から、フランスの税制がドイツの税制に近しいと判断しました。

 

 

〔参考にしたその他のサイト〕

 

ドイツの相続税法

http://www.gesetze-im-internet.de/erbstg_1974/BJNR109330974.html#BJNR109330974BJNG000203140

 

立命館大学税法研究会のドイツの相続税法の日本語訳及び解説

http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/law/lex/08-4/amano.pdf