本ページでは、中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制を比較し、各制度の要点をまとめています。
【共通点】
①新品の固定資産が対象で、中古は対象外
②"ソフトウェア"は、開発研究用のものや、所定のサーバー用のもの等は対象外
【相違点】
取得価額の下限
固定資産の種類 | 中小企業投資促進税制 | 中小企業経営強化税制 |
機械装置 | 単価160万円以上 | 単価160万円以上 |
工具 | 単価120万円以上 or 期中合計120万円以上 & 単価30万円以上 | 単価30万円以上 |
ソフトウェア | 単価70万円以上 or 期中合計70万円以上 | 単価70万円以上 |
車両運搬具 | 下限の制限なし | 制度の対象外 |
船舶 | ||
器具備品 | 制度の対象外 | 単価30万円以上 |
建物附属設備 | 単価60万円以上 |
※中小企業投資促進税制の対象になる工具は、測定工具と検査工具に限定されています。
※中小企業投資促進税制の対象になる車両運搬具は、貨物の運送の用に供される普通自動車で、車両総重量が3.5トン以上のものです。
※中小企業投資促進税制の対象になる船舶は、内航海運業の用に供される船舶です。
※両税制とも、上記の単価は通常一単位として取引される単位による購入金額です。本体と一体になって使用する附属機器も購入していたときは、その附属機器の代金を含めた総額で判定することができます。また、消費税の会計処理で税抜経理を採用している会社では消費税抜きの取得価額で、税込経理を採用している会社では消費税込みの取得価額で判定します(中小企業経営強化税制Q&A集の共-8より)。
※設備投資に関連して補助金を受け取り、法人税法第42条の圧縮記帳の適用を受ける場合は、両税制とも、圧縮記帳後の金額により対象になるのか判定を行います。
税額控除の算定式
資本金の金額 | 中小企業投資促進税制 | 中小企業経営強化税制 |
3000万円以内 | 取得価額×7% | 取得価額×10% |
3000万円超 | 制度の対象外 | 取得価額×7% |
※船舶について中小企業投資促進税制を適用する場合、税額控除の算定式は上記ではなく、"取得価額×75%×7%"になります。
税額控除の上限
両税制とも、税額控除前の法人税額の20%が上限になります。
法人税の税率
課税所得800万円以下→法人税率15%
課税所得800万円超 →法人税率23.2%
※複数の設備投資を行い、設備投資毎に両税制を使い分けたときは、税額控除の上限は中小企業投資促進税制から適用し、上限に残額があるときに限り、中小企業経営強化税制に適用します。つまり、両税制の税額控除の合計額は、法人税額の20%を超えることはありません(租税特別措置法第42条の12の4第2項より)。
上限を超える超過額
両税制とも、控除できなかった金額を、1年間に限り、繰り越すことが認められています。
地方税への影響
両税制とも、法人県民税・法人市民税は、税額控除後の法人税を基に算定されます(地方税法第23条第1項第四号イ、第292条第1項第四号イより)。
法人税・地方税の節税効果
資本金の金額 | 中小企業投資促進税制 | 中小企業経営強化税制 |
3000万円以内 | 取得価額合計の約8% | 取得価額合計の約12% |
3000万円超 | - | 取得価額合計の約8% |
※税額控除の上限(税額控除前の法人税額の20%)を超えない場合の節税効果です。上限を超えると、節税できる金額は増えないことから、上記の割合が段々と小さくなっていきます。
他の税制との併用
賃上げ促進税制、研究開発税制との併用は可能です。ただし、法人税額から控除できるのは、法人税額の90%までと制限されています(租税特別措置法第42条の13第1項より)。
※同一の減価償却資産について、研究開発税制と併用することはできません(租税特別措置法第53条より)。
特別償却の算定式
固定資産の種類 | 中小企業投資促進税制 | 中小企業経営強化税制 |
機械装置 | 取得価額×30% | 取得価額×100% |
工具 | ||
ソフトウェア | ||
車両運搬具 | 制度の対象外 | |
船舶 | 取得価額×75%×30% | |
器具備品 | 制度の対象外 | 取得価額×100% |
建物附属設備 |
地方税への影響
両税制とも、法人県民税・法人市民税・法人事業税等は、特別償却後の課税所得を基に算定されます(地方税法第72条の23第1項第一号等より)。
中小企業投資促進税制の場合、税務申告以外の手続きはありません。
一方、中小企業経営強化税制の場合では、経営力向上計画の認定を受けることが必須である他、工業会の証明書を取り寄せるか、経済産業局から確認書を取得する必要があります。
一つの設備投資に対して両税制のどちらも適用可能である場合、どちらか一方を選ぶことになります。
税には2種類の負担が求められます。一つは金銭的な負担であり、もう一つは時間的な負担です。
中小企業経営強化税制は節税効果が高く金銭的な負担は軽くなりますが、税務申告以外の手続きに結構な時間がとられ時間的な負担は大きくります。
一方、中小企業投資促進税制は節税効果の面でやや劣るものの、時間的な負担はありません。
両税制の節税効果の差額(中小企業経営強化税制の節税金額-中小企業投資促進税制の節税金額)と、中小企業経営強化税制の手続きに費やされる作業時間を天秤にかけて選ぶことになります。