本ページでは、会計ソフトで作成する帳簿の保存方法等がどのように変わるのかについて、その要点をまとめています(2023年7月1日更新)。
決算時に作成する仕訳帳や総勘定元帳等の帳簿は、法人税法の規定により、原則として、7年間保存しなければなりません。
その保存方法が、令和4年以降は、会計ソフトに入力したデータを紙に印刷をして保存する従来からの方法の他、印刷をせずに入力データを電子データにして保存することが認められることになりました。この電子データで保存された帳簿のことを電子帳簿といいます。
※正確には令和3年以前も電子帳簿は認められていましたが、税務署から事前に承認を受ける必要がありました。令和4年以降はこの承認手続きが無くなり、本制度を利用しやすくなった訳です。
※電子データの保存場所は、パソコンのハードディスク、CD、DVD、USBメモリ、クラウド等、様々な場所が認められています。ただし、後述の理由により、税務調査時にすぐに取り出すことのできる場所である必要はあります。
紙に印刷した帳簿と電子帳簿のメリット、デメリットを比較します。
帳簿の種類 | メリット | デメリット |
紙に印刷した帳簿 |
紙の方が安心できる人にとっては メリットがある |
①保管するのが大変 ②印刷の手間がかかる |
電子帳簿 |
①保管するのが楽 ②印刷の手間がかからない ③届出書を予め出しておけば、 過少申告加算税が減額される |
手軽な電子データであるため、 誤って削除したり、無くしやすい |
市販の会計ソフトを使用している法人の場合、次の全要件を満たしている必要があります。後述する「優良な電子帳簿」よりも、ハードルは低くなっています。
会計ソフトの操作説明書を会社に置いておき、税務調査のときに担当者にすぐに渡せるようにしておくこと
「事務手続を明らかにした書類」を会社に置いておき、税務調査のときに担当者にすぐに渡せるようにしておくこと
税務調査のときに、担当者が帳簿の内容を閲覧したり、印刷したりすることができるよう、社内にパソコン、モニター、プリンター等を備え付けておくこと。また、担当者に電子帳簿を容易に渡せるようにしておくこと
※電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係)では、三つ目の要件に関連して、仕訳帳をCSV形式等で保存することと、可能であれば会計ソフト等のバックアップデータも保管しておくことを求めています。
【会計ソフトの変更をされた場合】
弊所では、「旧会計ソフトから出力された過去の仕訳データ(CSVファイル等)」を、「現在の会計ソフトに読み込ませることのできる仕訳データ」に変換するサービスを行っております。会計ソフトの変更をされ、前期以前の会計データを新しい会計ソフト上で利用されたい方は、弊所まで、お気軽にお問い合わせください。
電子帳簿保存法取扱通達4-6の中で、「事務手続を明らかにした書類」は次のように定義されています。
『入出力処理(記録事項の訂正又は削除及び追加をするための入出力処理を含む。)の手順、日程及び担当部署並びに電磁的記録の保存等の手順及び担当部署などを明らかにした書類』
また、上述の一問一答の問9の中で、「事務手続を明らかにした書類」の文章が例示されています(例示の内容は次の通りです)。この例示の内容をベースにし、各法人の実態にあわせた内容に変更すると容易に作成できると思います。
「国税関係帳簿に係る電子計算機処理に関する事務手続を明らかにした書類」
(入力担当者)
1.仕訳データ入出力は、所定の手続を経て承認された証票書類に基づき、入力担当者が行う。
(仕訳データの入出力処理の手順)
2.入力担当者は、次の期日までに仕訳データの入力を行う。
⑴ 現金、預金、手形に関するもの:取引日の翌日(営業日)
⑵ 売掛金に関するもの:請求書の発行日の翌日(営業日)
⑶ 仕入、外注費に関するもの:検収日の翌日(営業日)
⑷ その他の勘定科目に関するもの:取引に関する書類を確認してから1週間以内
(仕訳データの入力内容の確認)
3.入力担当者は、仕訳データを入力した日に入力内容の確認を行い、入力誤りがある場合は、これを速やかに訂正する。
(管理責任者の確認)
4.入力担当者は、業務終了時に入力データに関するデータをサーバに転送する。管理責任者はこのデータの確認を速やかに行う。
(管理責任者の確認後の訂正又は削除の処理)
5.管理責任者の確認後、仕訳データに誤り等を発見した場合には、入力担当者は、管理責任者の承認を得た上でその訂正又は削除の処理を行う。
(訂正又は削除記録の保存)
6.5の場合は、管理責任者は訂正又は削除の処理を承認した旨の記録を残す。
税務署等に対し、優良な電子帳簿に関する届出書を事前に提出しておくと、過少申告加算税の金額が減額されることになりました。
【過少申告加算税の軽減】
過少申告加算税は罰金の一種です。その金額は、原則として、納付されていなかった税額に5%か10%の率を乗じて算定されます。それが、優良な電子帳簿の届出がしてあった場合では、過少申告加算税が5%減額されることになります。うっかりミスはどんな人でも起こします。このメリットは大きいと思います。
(調査通知を受けた後に)納税者がミスに気付き、自主的に修正申告をした場合 ⇒ 本来は5%、優良な電子帳簿のときは0%
税務調査時にミスを指摘され、修正申告をした場合 ⇒ 本来は10%、優良な電子帳簿のときは5%
※法人税の他、消費税、所得税のような国税全般について適用を受けることができます。ただし、課税貨物の仕入れに関する消費税についても適用を受けたいときは、税務署の他、税関に対しても届出書を提出しておく必要があります。
※優良な電子帳簿の軽減措置は過少申告加算税が対象であり、他の加算税(重加算税、無申告加算税、不納付加算税)が減額されることはありません。
【優良な電子帳簿の範囲】
令和5年度の税制改正で、優良な電子帳簿の対象となる帳簿の範囲が明確化されました(電子帳簿保存法施行規則第5条第1項より)。
-優良な電子帳簿の具体例-
仕訳帳、総勘定元帳、売上帳、仕入帳、経費帳、賃金台帳(所得税のみ)、売掛帳、買掛帳、受取手形記入帳、支払手形記入帳、貸付帳、借入帳、未決済項目に係る帳簿、有価証券受払い簿(法人税のみ)、固定資産台帳、繰延資産台帳
「電子帳簿保存法の内容が改正されました(国税庁サイトより)」
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0023003-082.pdf
【優良な電子帳簿にするための要件】
次の全要件を満たしている必要があります(電子帳簿保存法施行規則第5条第5項より)。
入力データの訂正や削除を行った後に、訂正等を行った事実が確認できる機能や、訂正等を行った内容を確認できる機能を有していること
通常の業務処理期間を経過した後に入力した場合、その事実が確認できる機能を有していること
電子帳簿とその他の帳簿との間において、関連性が確認できること
一定の検索機能を有していること
【優良な電子帳簿にするための届出】
優良な電子帳簿に切り替える最初の事業年度の法定申告期限までに、届出書を提出しておく必要があります(電子帳簿保存法取扱通達8-4より)。
例えば、3月決算法人で令和4年4月1日から令和5年3月31日までの事業年度における決算から優良な電子帳簿に切り替えるときは、同事業年度における法定申告期限(通常は令和5年5月31日)までに届出書を提出することになります。
届出書は、国税庁サイトの次のページからダウンロードできます。
「国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等に係る過少申告加算税の特例の適用を受ける旨の届出」
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/0021011-060_01.htm