本ページでは、期限後申告や更正請求によって「上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除」の適用を受けることができるのかについて、その要点をまとめています。
上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除の適用を受けるための申告要件は、次の3つです(租税特別措置法第37条の12の2第7項、同法施行令第25条の11の2第11項より)。
上述の通り、上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除の申告要件では、確定申告書を申告期限内に提出することは求められていません。
そのため、譲渡損失の生じた年分やその後の年分の確定申告書を申告期限後に提出した場合であっても、申告要件は満たされることになります。
ただし、最も古い年分から順番に、確定申告の手続きを行っていく必要があります(これを連続申告要件といいます)。
譲渡損失の生じた年分の確定申告の際に、株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書等を添付し忘れていたケースでは、更正の請求を行うことが認められています(租税特別措置法通達37の12の2-5より)。
更正の請求の場合でも、連続申告要件を満たすことが求められています。
令和元年10月の大阪地裁の判例では、次の順番で行われた手続きが連続申告要件を満たしていないとして、平成24年中に生じた譲渡損失の繰越控除が認められませんでした。
裁判所が繰越控除を認めなかったのは、平成24年分の更正請求の前に平成25年分と平成27年分の確定申告が行われていたため、連続申告要件を満たしていないと判断したためです。
この判例の方針に従いますと、期限後申告や更正の請求で譲渡損失の繰越控除が認められるのは、次のケースに限定されることになります。
〔期限後申告〕
譲渡損失の生じた年分以降、確定申告を毎年行っていなかったケース
〔更正の請求〕
譲渡損失の生じた年分は確定申告を行っていたが、その後は確定申告を毎年行っていなかったケース
源泉徴収選択口座を通して上場株式等の売買を行う場合、その口座内で生じた譲渡利益は源泉徴収がされることから、確定申告の際にその口座内の譲渡利益や譲渡損失を記載しないことが認められています(税特別措置法第37条の11の5より)。
更正の請求の根拠法令は国税通則法第23条第1項であり、同項では、更正の請求を行う場合、課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったか、その計算に誤りがあったか、のいずれかに該当することを求めています。
譲渡損失が生じた年分において譲渡損失を記載しないで確定申告を行っていたケースは、法律の規定に従っていなかった訳でもないし、計算に誤りがあった訳でもありません(譲渡損失の記載を忘れたことは計算誤りにはなりません)。
このことから、譲渡損失の記載を忘れていたことを事由として更正の請求を行っても、税務署からは「更正をすべき理由がない」と更正を拒否されるため、譲渡損失の繰越控除はできません。
上述の判例は最高裁の判例ではなく、この判例の方針で実務が確定している訳ではありませんが、この判例の方針に従いますと、申告期限の過ぎた後で譲渡損失の繰越控除が認められるか否かは、次のような取り扱いになります。
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