本ページでは、相続税の申告期限までに遺産分割等がなされた土地について、その評価額が、分割前ではなく、分割後の状態を基にして算定される根拠について説明しています。
遺産分割等による宅地の分割が行われた場合は、その分割後の画地を「1画地の宅地」とします。
つまり、評価対象地を相続した相続人は、実際に本人が取得した土地だけをみて評価する(言い換えると、他の相続人の取得した土地のことは評価に加味しない)ことになります。
遺産分割等による宅地の分割が親族間等で行われた場合において、その分割が著しく不合理であると認められるときは、その分割前の画地を「1画地の宅地」とします。
つまり、例外のケースでは、評価対象地を相続した相続人は、実際に本人が取得した土地だけをみて評価するのではなく、他の相続人の取得した土地のことも加味した上で評価することになります。
日本の相続税の課税方式を「遺産取得税方式」とみるのか、「遺産税方式」とみるのかによって、土地の評価単位は変わってきます。
「遺産取得税方式」は、相続人である各個人がそれぞれ取得した遺産を課税の対象とします。そのため、土地の評価単位は、各個人が現実に取得した土地を単位とする方が合理的になります。
他方、「遺産税方式」は、被相続人の所有していた遺産全体を課税の対象とします。そのため、分割の内容によって納税額の総額が変わることを避けるため、土地の評価単位は、分割前の土地全体を単位とすべきことになります。
結論としては、下記の二つの理由から、日本の相続税の課税方式は「遺産取得税方式」の一種と捉えることができるため、分割後の画地を「1画地の宅地」とする方法が原則になります。
相続税法第2条で、相続税は各個人がそれぞれ取得した遺産を単位として課されることになっているためです。
相続税法第2条(相続税の課税財産の範囲)
日本の相続税は、大まかにいうと、次の手順で納付税額を算定します。
相続税の総額を按分して各個人の税額を求めるところは「遺産税方式」的ではありますが、①の計算は各個人単位で行われていること、①の比率によって各個人の税額が求められることから、日本の相続税の課税方式は、「遺産税方式」の要素を一部取り込んだ「遺産取得税方式」と考えられます。
財産評価基本通達7-2(評価単位)の注書きが根拠規定です。
(注) 贈与、遺産分割等による宅地の分割が親族間等で行われた場合において、例えば、分割後の画地が宅地として通常の用途に供することができないなど、その分割が著しく不合理であると認められるときは、その分割前の画地を「1画地の宅地」とする。
土地の分割内容が、相続税の節税を目的としてなければ、通常行われない内容であるケースに限り、課税の公平の観点から、分割される前の土地全体で評価することが求められます。