宅地造成費は、次のステップに従って計算します。
評価する土地が平坦地であるのか、傾斜地であるのかを、その土地自体の傾斜度で判定します。
平坦地としての宅地造成費と傾斜地としての宅地造成費とでは、金額に大きな開きがあることが結構あります。税務当局とのトラブルを避けるため、傾斜度を正確に計測しておくことが重要になります。
評価する土地を平坦地と判定したときは、国税庁の公表する「表1 平坦地の宅地造成費」に記載されている各造成費の単価に基づいて宅地造成費の金額を計算します。
次の表1は、愛知県の令和6年分のものです。造成費毎の単価がそれぞれ定められています。特に、土盛費と土止費は金額が大きくなることが多く、その土地の評価額への影響は大きいです。土盛りの体積や土止用の擁壁の面積等を正確に計測することが大変重要になります。
表1 平坦地の宅地造成費 | |
工事費目 | 金額 |
整地費 |
整地を必要とする面積 1㎡当たり800円 |
伐採・抜根費 |
伐採・抜根を必要とする面積 1㎡当たり1,000円 |
地盤改良費 |
地盤改良を必要とする面積 1㎡当たり2,000円 |
土盛費 |
他から土砂を搬入して 土盛りを必要とする場合の 土盛り体積 1㎥当たり7,700円 |
土止費 |
土止めを必要とする場合の 擁壁の面積 1㎡当たり81,500円 |
評価する土地を傾斜地と判定したときは、国税庁の公表する「表2 傾斜地の宅地造成費」に記載されている造成費の単価に基づいて宅地造成費の金額を計算します。
次の表2も、愛知県の令和6年分のものです。表2に記載されている"傾斜度"とは、評価する土地自体の傾斜度ではなく、道路面との高低差に基づいて計算される傾斜度になります。この傾斜度も正確に計測する必要があります。
表2 傾斜地の宅地造成費 | |
傾斜度 | 金額 |
3度超 5度以下 |
21,000円/㎡ |
5度超 10度以下 |
25,400円/㎡ |
10度超 15度以下 | 40,200円/㎡ |
15度超 20度以下 | 56,700円/㎡ |
20度超 25度以下 | 62,700円/㎡ |
25度超 30度以下 | 65,900円/㎡ |
想定している土地の具体例をいくつかご紹介します。
道路面から下がっている農地です。高低差が大きいほど宅地造成費は高額になります。
【設例】
評価する農地の地積 :580㎡
道路との高低差の平均 : 50㎝
土盛りの必要な体積 :278㎥
土止めの必要な面積 : 34㎡
【宅地造成費の計算】
整地費 800円×580㎡=464,000円
土盛費 7,700円×278㎥=2,140,600円
土止費 81,500円×34㎡=2,771,000円
計 5,375,600円
道路面より高く、法面で土止工事の行われていない農地です。
【設例】
評価する農地の地積 :630㎡
道路との高低差の平均 : 65㎝
伐採・抜根の必要な面積 : 10㎡
土止めの必要な面積 : 64㎡
【宅地造成費の計算】
整地費 800円×630㎡=504,000円
伐採・抜根費 1,000円×10㎡=10,000円
土止費 81,500円×64㎡=5,216,000円
計 5,730,000円
傾斜している駐車場です。郊外にあるコンビニの駐車場にも、傾斜の見受けられることがあります。
【設例】
評価する駐車場の地積 :864㎡
道路との高低差 :1.71m
道路からの奥行の長さ :32.32m
【宅地造成費の計算】
傾斜角度=3.028度
21,000円×864㎡=18,144,000円
∴ 18,144,000円
「接している道路と高低差のある土地」や「傾斜のある土地」は、「平坦であり、かつ、道路と高低差のない土地」よりも使い勝手が悪い面があり、土地としての価値は低く評価される傾向があります。
相続税を計算する際においても、「接している道路と高低差のある土地」や「傾斜のある土地」は、低く評価されてしかるべきです。
相続税の申告で宅地造成費控除を使うときには、税務署に対し、その具体的な数値や客観的な計算根拠を明確に示すことが求められます。
「接している道路と高低差のある土地」や「傾斜のある土地」をお持ちの方や相続された方は、是非、弊所にご相談ください。