本ページでは、土砂災害特別警戒区域内にある土地の評価について、その要点をまとめています(2022年11月更新)。
東海三県の各県では、土砂災害特別警戒区域等の場所をインターネット上で公開しています。
路線価方式で評価を行う市街化区域にも、土砂災害特別警戒区域として指定されている場所があることが見受けられます。
愛知県土砂災害情報マップ(PC版)
https://sabomaps.pref.aichi.jp/portal/showmap.php
愛知県土砂災害情報マップ(スマホ版)
https://profile.maps.pref.aichi.jp/map/simple/?cid=1&gid=0&mid=20037
砂防関係区域マップ(岐阜県)
https://gis-gifu.jp/gifu/PositionSelect?mid=2406
三重県土砂災害マップ(PC版)
https://www.sabo.pref.mie.jp/MapForm.aspx?m=2
三重県土砂災害マップ(スマホ版)
https://www.sabo.pref.mie.jp/sp/MapForm.aspx?m=50
相続税の評価で用いる"特別警戒区域補正率"は、評価対象地の全部又は一部が、土砂災害特別警戒区域として指定されているケースで使います。「基礎調査の結果公表済み」や「基礎調査結果」とされている区域は、指定が完了していませんので、"特別警戒区域補正率"を使うことはできません。
評価対象地の全体の地積に、特別警戒区域の地積の占める割合に応じて、補正率が定められています。
この補正率のことを、"特別警戒区域補正率"といいます。
特別警戒区域の地積÷総地積 | 特別警戒区域補正率 |
10%以上 |
0.90 |
40%以上 |
0.80 |
70%以上 | 0.70 |
【設例】
総地積:1053㎡
特別警戒区域の地積:495㎡
路線価:80,000円
奥行価格補正率:1.00
【計算】
495㎡÷1053㎡ ≒ 47%
→ 特別警戒区域補正率0.80
評価額=80,000円×1.00×0.80×1053㎡=67,392,000円
土砂災害特別警戒区域内にある宅地については、「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」により建築物の構造規制が課せられ、宅地としての通常の用途に供するときに一定の利用制限がかかります。
この減価要因を相続税評価額に反映されるため、この通達が作られました。
つまり、評価対象地の形状等に着目をした物理的な補正ではなく、利用制限という権利関係に着目をした補正に関する規定といえます。
相続税申告の場合、亡くなられた日現在で、評価対象地の全部又は一部が土砂災害特別警戒区域として指定されていたのかを判定します。土砂災害特別警戒区域の指定は解除されることもありますので、判定時点には注意が必要です。
固定資産税評価額には、土砂災害特別警戒区域として指定されたことによる減価要因を独自に織り込むことになっています。
倍率方式は固定資産税評価額を基に評価を行います。減価の重複を避けるため、倍率方式では特別警戒区域補正率を適用できないことになっています。
市街地農地、市街地周辺農地、市街地山林、市街地原野の相続税評価額は、これらの土地の地目が宅地であった場合の評価額を基に算定します。
これらの土地が土砂災害特別警戒区域内にあった場合、宅地転用後に上述の利用制限が課せられるため、宅地以外の地目の土地についても、特別警戒区域補正率の適用ができるとしています。
路線価方式で評価を行う雑種地も、同様に取り扱われます。
20-6(土砂災害特別警戒区域内にある宅地の評価)
土砂災害特別警戒区域内(土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律第9条((土砂災害特別警戒区域))第1項に規定する土砂災害特別警戒区域の区域内をいう。以下同じ。)となる部分を有する宅地の価額は、その宅地のうちの土砂災害特別警戒区域内となる部分が土砂災害特別警戒区域内となる部分でないものとした場合の価額に、その宅地の総地積に対する土砂災害特別警戒区域内となる部分の地積の割合に応じて付表9「特別警戒区域補正率表」に定める補正率を乗じて計算した価額によって評価する。(平30課評2-49外追加)
付表9
特別警戒区域補正率表(平30課評2-49外追加)
特別警戒区域の地積÷総地積 | 補正率 |
10%以上 |
0.90 |
40%以上 |
0.80 |
70%以上 | 0.70 |
(注)がけ地補正率の適用がある場合においては、この表により求めた補正率にがけ地補正率を乗じて得た数値を特別警戒区域補正率とする。ただし、その最小値は0.50とする。
第4条(基礎調査)
1.都道府県は、基本指針に基づき、おおむね5年ごとに、第7条第1項の規定による土砂災害警戒区域の指定及び第9条第1項の規定による土砂災害特別警戒区域の指定その他この法律に基づき行われる土砂災害の防止のための対策に必要な基礎調査として、急傾斜地の崩壊等のおそれがある土地に関する地形、地質、降水等の状況及び土砂災害の発生のおそれがある土地の利用の状況その他の事項に関する調査(以下「基礎調査」という。)を行うものとする。
2.都道府県は、基礎調査の結果を、国土交通省令で定めるところにより、関係のある市町村(特別区を含む。以下同じ。)の長に通知するとともに、公表しなければならない。
第9条(土砂災害特別警戒区域)
1.都道府県知事は、基本指針に基づき、警戒区域のうち、急傾斜地の崩壊等が発生した場合には建築物に損壊が生じ住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれがあると認められる土地の区域で、一定の開発行為の制限及び居室(建築基準法第2条第四号に規定する居室をいう。以下同じ。)を有する建築物の構造の規制をすべき土地の区域として政令で定める基準に該当するものを、土砂災害特別警戒区域(以下「特別警戒区域」という。)として指定することができる。
2.前項の規定による指定(以下この条において「指定」という。)は、第2条に規定する土砂災害の発生原因ごとに、指定の区域並びにその発生原因となる自然現象の種類及び当該自然現象により建築物に作用すると想定される衝撃に関する事項(土砂災害の発生を防止するために行う建築物の構造の規制に必要な事項として政令で定めるものに限る。)を定めてするものとする。
4.都道府県知事は、指定をするときは、国土交通省令で定めるところにより、その旨並びに指定の区域、土砂災害の発生原因となる自然現象の種類及び第2項の政令で定める事項を公示しなければならない。
5.都道府県知事は、前項の規定による公示をしたときは、速やかに、国土交通省令で定めるところにより、関係のある市町村の長に、同項の規定により公示された事項を記載した図書を送付しなければならない。
6.指定は、第4項の規定による公示によってその効力を生ずる。
7.関係のある市町村の長は、第5項の図書を当該市町村の事務所において、一般の縦覧に供しなければならない。
8.都道府県知事は、土砂災害の防止に関する工事の実施等により、特別警戒区域の全部又は一部について指定の事由がなくなったと認めるときは、当該特別警戒区域の全部又は一部について指定を解除するものとする。